この年末年始、区内の各地域では夜警や防犯パトロール、どんど焼き、歳の神といった行事が各地で行われていました。特殊詐欺や強盗などのニュースで不安を感じる町の方からは、パトロールがとてもありがたいという声を聞きました。お近くで行われた新年の行事に参加された方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。これらの活動の担い手の多くは町会・自治会の皆様です。
町会・自治会は地域の中で重要な役割を果たしますが、加入率の低下、活動の担い手不足などの深刻な課題があり、議会でも様々議論が交わされています。この状況は世田谷区に限らず、新宿区では昨年十二月、未来につなぐ町会・自治会ささえあい条例が制定されました。この条例では、暮らしやすい町の実現のために、条例の周知、理解促進を図ること、活性化施策に取り組むこと、マンション建築主・管理者等の連絡先を町会へ共有することが区の責務として定められています。昼間人口の過半数が在勤者、在学者であり、外国人の割合も高い新宿区では、区民、そして地域で活動する様々な主体が相互に関わり、町会・自治会への理解、関心を深め、連携、協力していくことが地域コミュニティーの持続的な発展につながるとしています。
昨年、地元の喜多見中部町会では、町会長が近隣にあるリコーブラックラムズ東京さんや駒澤大学の運動部の皆さんを巻き込んで喜多見小学校での朝の見守り活動を始めました。地域で活動する様々な主体が町会を中心に関わった好事例だと思いましたが、これは町会長の日頃の活動の成果が実ったものであり、全ての町会・自治会が同じように行えるものではありません。地域コミュニティーづくりを各町会の自発的な動きに任せるのではなく、区が地域で活動する様々な主体とのつなぎ役となり、後押しをする必要があると、私は考えます。
世田谷区において、町会・自治会と連携し、地域コミュニティーを持続的に発展させていくために何ができるのか、二点質問いたします。
一点目、新宿区のようにマンションと町会・自治会の間を区が取り持ち、つなぐ仕組みは非常に大事だと考えますが、世田谷区の町会・自治会への加入促進施策の現状についてお伺いします。
二点目、以前、我が会派の河野議員からも質疑を行っていますが、大学生など地域の若者と町会・自治会をつなぎ、共に活動してもらえるような仕組みはつくれないでしょうか。町会側は、若い方や地域の学生に活動へ参加してもらいたいという希望があっても、地域の学生とつながるきっかけは多くありません。一方で、地域貢献に対する意欲が高い方にとっても、何らかの活動に参加する取っかかりはなかなかありません。喜多見中部町会の場合は、町会長がブラックラムズとつながり、ブラックラムズから駒大へとつながったそうですが、区が間を取り持ち、最初のきっかけづくり、つなぎができれば、ほかの町会・自治会へも横展開ができるのではないかと思います。区の考えを伺います。
次に、世田谷区の人材育成強化施策について伺います。
区は、世田谷区人材育成方針に基づき取組を強化しているところではありますが、若手職員の離職が大変多い状況だと聞きます。一方で、若手職員からは、異動希望が通らないといった声も聞きます。異動希望を全てかなえるのは難しい、とはいえ、やりたい仕事ができないならば転職と考える方も多く、若い世代の価値観は変化しています。職員のモチベーションを高める取組ができないか、二点、質問いたします。
一点目、異動希望の取扱いや現状についてお伺いします。
二点目、空きポストへ希望者を募る仕組みについて伺います。私が以前勤めていた会社ではジョブポスティング制度があり、社内の様々な部署、職種について随時募集がかかっていました。世田谷区においては庁内公募という形で行われていると聞きましたが、どの程度活用されているのか、改善の必要はないのか、伺います。
現在実施中の取組、提案型プロジェクトチームも公募で行われており、近い制度ですが、一時的なものであり、必ずしもPT終了後に参加PTの主管部署へ異動できるものではありません。区役所に限らず、どんな職場においても、配属というものは希望どおりにいかない場合が一般的だと思いますが、それでもやりたい仕事ができるチャンスがあるということは今を踏ん張るモチベーションになります。意欲ある職員に前向きに活躍してもらいたく、伺います。
続いて、東京都の認証学童クラブ事業について伺います。
都は独自の認証学童クラブ制度の創設に向けて、来年度予算に事業を盛り込み、準備を進めています。認証制度は、学童クラブの質を高めるために、長期休み中の昼食の提供を条件とするといったことや、開所時間の延長なども議論されています。また、世田谷区を含む3区市において、認証学童に必要な機能、条件面の検討材料とするために実証事業を行っています。
今、世田谷区では、区立小学校内の新BOP学童クラブ、新BOP学童クラブの大規模化・狭隘化解消のために整備が始まった民設民営放課後児童クラブ、送迎や習い事などのサービスが充実した民間学童など、小学校低学年の子どもたちの放課後の預け先が各種ありますが、保護者にとっては、それぞれがどういう施設なのか分かりづらいという話をよく伺います。都の制度は今後創設されていくものですが、本制度、学童クラブについて区の考えを伺いたく、二点質問します。
一点目、さきに述べたように、放課後の預け先は各種ありますが、現状を伺います。
二点目、都の認証学童クラブ制度創設に向けた実証事業の状況、今後の展開について伺います。
最後に、ふるさと納税について伺います。
ふるさと納税の流出額は、令和6年度で110億円に達したのに対し、寄附受入れ実績は令和5年度で3億円にとどまります。議会でも寄附を募る取組についてこれまで様々声が上がり、区も寄附の入り口となる民間ポータルサイトを増やすなど対応してきましたが、寄附受入額は流出額に全く追いつかない状況です。受入額を増やしても焼け石に水だという考えもありますが、23区内、渋谷区や墨田区の寄附受入額は11億円以上、港区や新宿区でも5億円程度を受け入れており、まだ対策の余地はあると考えます。スピード感を上げて寄附額増に向け取り組んでいただきたく、2点質問します。
一点目、クラウドファンディングで区の取組を応援するといった形を取ることは区の取組の周知にも寄与し、有効な方法だと考えます。区もこれまで取り組んできてはおりますが、今後より多くの施策で活用していただきたく、ガバメントクラウドファンディングの取組状況や今後の展開についてお伺いします。
二点目、以前も港区の団体応援寄附金などの事例を取り上げて質問をしましたが、文京区でもふるさと納税大学寄附という形で東京大学と連携した展開をしています。寄附を通じて大学の地域貢献活動を応援するというこの仕組みは、寄附対象の大学だけでなく、区民も恩恵を受けることができます。こういった形で世田谷区でも取り入れることはできないのか、できるとすれば、いつから始められるのでしょうか。さきの定例会でも、大学側からふるさと納税での連携について御要望が上がっていると、区長の招集挨拶で話がありました。ぜひ早期に連携の仕組みを整えていただきたく、伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
◆生活文化政策部長の答弁
私からは、町会・自治会への支援について二点御質問をいただいてございます。順次、御御答弁申し上げます。
初めに、新宿区は条例を制定し、町会・自治会にマンション管理者等との接点をつくることを行っている。区の加入促進への取組の現状について伺うについてでございます。
議員お話しのございました本年四月一日施行予定の新宿区、未来につなぐ町会・自治会ささえあい条例では、町会・自治会活動への参加、協力、連携を後押しするため、マンションの建築主や管理者等の連絡先を区へ報告することを義務づけ、町会・自治会からの要望により、区はその連絡先を町会・自治会に提供することとしてございます。
区では、その逆に町会・自治会の了解を得て建設会社等に連絡先を提供し、建設会社等から町会・自治会に連絡することとしており、その際に加入促進の協力について依頼をしてございます。加えて、区内の不動産事業者においても、契約時に町会・自治会への加入を入居者に案内し、加入促進に御協力をいただいているところでございます。
また、区の窓口においても、転入届の際に配布している地域活動団体紹介パンフレット「世田谷へようこそ」の中で町会・自治会への加入を御案内するとともに、町会総連合会に対しましても加入促進チラシの作成や、ふるさと区民まつり等での加入促進活動などを支援してございます。
次に、大学生など地域の若者と町会・自治会をつなぎ、共に活動してもらえるような仕組みはつくれないかでございます。
区で大学生が地域とつながる機会として実施しておりますせたがや学生ボランティアネットワークに現在、8大学16団体が参加しており、このうち商店街や子ども食堂など地域活動団体と接点を持っている団体は7団体ございますけれども、残念ながら、町会・自治会等はございません。
こうした中で、先日、NPOと区が協働して実施する提案型協働事業の地域インターンシップ世田谷の活動発表会において、大学生が三軒茶屋町会にインターン生として参加し、課題の発見や解決策の提案をする等、町会・自治会と連携した活動が報告されました。
この活動報告を踏まえ、年5回開催しているせたがや学生ボランティアネットワークの会議に町会・自治会や地域活動団体をお招きして、接点が持てるような取組を、まずは来年度、運用方法を工夫することとしてございます。
学生が持つ課題解決力は地域社会で発揮することが期待できることから、引き続き、大学生と町会・自治会が共に活動できるように工夫してまいります。
以上でございます。
◆総務部長からの答弁
私からは、人材育成の強化について、二点御答弁申し上げます。
まずは、異動希望についてでございます。
区では、職場の活性化や業務の属人化防止など、組織運営上の目的とともに職員の意欲を高め、新たな職務で潜在的能力を発見するなど、人材育成の観点からも定期的な人事異動を実施しております。
定期人事異動では、事前に職員の意向調査を実施し、希望する職務や職場のほか、自身の目指すキャリアや習得したいスキル、経験、異動に関する特別な事情等といった情報を基に所属長ヒアリングなども行い、職員の知識や経験、組織に期待される役割等、こういったものも考慮しながら配属先を決定しております。
定期人事異動では毎年千人超の職員が異動するため、全ての職員の希望をかなえることは難しい状況でございますけれども、人事異動で新たな業務を経験することは自らの思いもよらない能力に気づく機会ともなります。成長を実感し、仕事にやりがいを感じることで組織への共感や区への愛着が高められるよう、引き続き、職員の意向を確認しながら取り組んでまいります。
次に、庁内公募等についてに回答申し上げます。
区の庁内公募制度は、特定の職務に対して職員を広く募集し、意欲や適性を面接で見定め、当該職員の能力や経験を最大限に活用することにより職員の意欲高揚や組織の活性化を図ることを目的に平成十四年度から実施をしております。
これまで、区の重点施策や新規事業のほか、児童相談所や生活支援課など専門性の高い業務や、東京2020大会組織委員会など、国、自治体や民間企業等への派遣、こうした実績がございます。各事業で意欲あふれる職員がやりがいを持って活躍をしているところです。
さらに、今年度からは提案型プロジェクトチーム制度も始まり、各PTで多くの若手職員が活躍をしています。来年度も庁内公募制度と両輪で取組を進め、意欲あふれる職員のモチベーションと組織の活性化につなげてまいりたいと、このように考えてございます。
私からは以上です。
◆子ども・若者部長からの答弁
私からは、二点御答弁いたします。
初めに、小学校低学年の放課後の預け先の現状についてです。
民間事業者がサービス業として経営しております類似施設も数多く存在しておりますけれども、区内における放課後児童健全育成事業を実施する児童福祉法に基づいた学童クラブは、区立小学校内で運営する新BOP学童クラブと、区に法上の届出を出して運営する民間学童クラブの二種類がございます。
法上の民間学童クラブは、国が定める設備や運営に関する基準等を満たして運営することを前提としておりますが、都内では約四割のクラブが都が独自に定めるかさ上げ要件を満たす都型学童クラブ事業として運営を行っております。
今般、都は令和七年度から都型学童クラブ事業に代わり、新たに認証学童クラブ制度を創設する方針を打ち出しております。本制度は、子どもの最善の利益を考慮した育成支援のさらなる推進等を目的とし、これまでよりも高水準に設定する施設規模や職員体制等の基準を満たす学童クラブを都が認証し、それに対して必要となる経費が補助される予定でございます。
次に、東京都認証学童クラブ制度創設に向けた実証事業の状況や今後の展開についてでございます。
都が認証学童クラブ制度の創設に向けて区市町村に対して先行実施事業の公募を行ったため、区内四つの民間学童クラブから、朝や夜の時間延長、開所前の不登校児童の受入れ、小一の壁対策、子どもの意見表明の実現を図る取組の四つの事業を提案し、全ての事業が採択されました。
採択された事業は現在も継続中のため、最終的な結果や評価等はこれからとなりますが、中間報告において顕著となった一つは時間延長であり、特に夏休み期間中の早朝の時間延長のニーズが高いという実績が出ております。不登校児童受入れに関しましては、クラブ利用児童以外も対象にしているものの、現時点で利用実績はありません。利用したことのない施設に行くハードルの高さや、事業周知が必要な方に届きにくい等の課題があると認識してございます。
今後、東京都において具体的な制度設計が進むことになりますが、区といたしましては、より質の高い学童クラブとしていくため、認証学童クラブ制度への誘導を前提とした準備を進めてまいります。
以上です。
◆政策経営部長からの答弁
私からは、ふるさと納税について二点、初めに、ガバメントクラウドファンディングの取組状況、今後の展開についてお答えいたします。
区では、寄附の使い道を分かりやすくお示しすることで共感を得て実際の寄附に結びつくよう取り組んでおり、クラウドファンディング型寄附募集は、目的や内容をより詳細に広報できる有益な取組であると考えております。
今年度は、民間のサイトを利用し、せたがや動物とともにいきるまちプロジェクトや、みんなでつくろう!!あそもりプロジェクト等、四つのプロジェクトを実施しました。返礼品という誘引もあるものの、約三か月の募集期間で、それぞれおよそ760万円、580万円の御寄附を頂き、目標を達成することができました。ほかの二件につきましても同様に目標を達成しております。
現在、ふるさと納税に関する特設サイトをリニューアルし、クラウドファンディング型の取組を紹介して寄附を募ることができる機能を付与することを検討しておりますので、こちらも活用し、さらなる寄附獲得につなげてまいります。
続きまして、ふるさと納税の大学の地域貢献活動を応援する取組についてでございます。
区内及び近隣には17の大学、学部があり、教育、防災、生涯学習など多岐にわたる連携事業を実施し、地域課題の解決など様々な形で教育研究活動の成果が還元されておりますが、区が直面する社会課題の解決に向けて大学との連携、協働を一層深めることが必要です。
お話しのふるさと納税を活用して大学の地域貢献活動を支援することは、大学の安定的な教育研究活動の継続や新たな公益的活動につながるとともに、区における地域社会のさらなる発展、充実が期待できる取組と認識しております。大学学長と区長との懇談会でも話題となり、現在、こうした取組の在り方について、区内大学との対話を通して実施内容の検討を始めております。
区といたしましては、引き続き、具体的な検討、制度設計を進めまして、年内に実施できるよう着実に取り組んでまいります。
以上でございます。
◆くろだあいこの再質問
町会・自治会への支援について再質問いたします。
さきに紹介した喜多見中部町会の見守り活動ですが、駒大運動部やブラックラムズとの連携、学校、PTA、子どもたちへの周知、警察署との連携なども含め、見守り活動を実現するまで半年かかったという話も伺いました。御答弁では学生ボランティアとのつなぎを工夫していただけるということでしたが、地域で活動する様々な主体、例えば大学のボランティアサークルにとどまらず大学そのもの、企業、商店街、事業者、地域のスポーツチーム、警察、消防などとのつなぎ役、調整役、活動の後押しを区が担い、地域コミュニティーを活性化させるための支援が必要ではないかと考えます。
例えば、世田谷総合支所で行っている地域交流ラボは大学と地域の連携を区が後押しする仕組みですが、課題もあると聞きます。他地域へも展開するには実施に当たっての課題等も押さえておく必要があると思いますが、地域交流ラボの今後の展開とともに伺います。
◆世田谷総合支所長からの答弁
私からは、地域交流ラボの取組、課題について御答弁いたします。
地域交流ラボは、令和四年度から地域活性化を目的に実施しており、世田谷総合支所管内に立地する5大学と7地区が連携し、例えば、防災、防犯などの課題テーマに対して大学生が町会・自治会の地域住民と交流をし、地域行事などにも参加しながら地区の抱える課題について調査研究し、住民等に提案、発表する取組でございます。先日、オープンカンファレンスが盛大に行われました。
この事業を行う上での必要な要素や課題としまして、世田谷地域内に多くの大学があり、地域資源に恵まれている点がございます。また、学生の募集方法について、大学によってはゼミやサークル、一般募集など学校関係者を含め関わり方に差があり、安定的な学生の確保が難しい点があることや、学生からの課題解決に向けました具体的な取組に結びつくまでの提案のまとめには学生と町会・自治会とをつなぐ伴走型の支援が必要不可欠であることがございます。
これらの課題等を踏まえ、まちセンを中心に町会・自治会の意見を丁寧に聞きながら、地域交流ラボの提案が実践に結びつくよう、今後とも地区課題の解決と地域活性化に向けまして一層取り組んでまいります。
以上です。
◆くろだあいこの意見
世田谷総合支所での取組で分かってきた課題を踏まえ、他地域でも地域の実情に応じて各総合支所やまちづくりセンターで地域交流ラボを参考とした取組を検討いただきたいと思います。
また、大学だけでなく、ほかにも地域で活動する様々な主体があり、相互につなぎ合わせるきっかけ、仕組みづくりについて、ぜひ区全体で推進いただきたいです。
今回、ふるさと納税での大学の地域貢献活動支援についても御答弁いただきましたが、区長が招集挨拶で取り上げていたふるさと納税を活用したクラウドファンディングで市民活動団体や企業への補助を行う新たな課題解決事業についても期待をしております。各施策を各部署でそれぞれ行うのではなく、縦割りを廃して相互に連携し、地域コミュニティー活性化、まちづくりを支援いただけるよう要望いたします。
また、人材育成の取組については異動希望に焦点を当てましたが、本定例会でも様々議論があるとおり、採用、マネジメント等、ほかの取組も併せて成果が出なければ課題解決に至らないと認識しています。引き続き、この点、質問、要望を行っていきたいと思います。
以上で終わります。
以上。
先日、東京都ベビーシッター利用支援事業の世田谷区導入に関する陳情が趣旨採択となりました。これまで我が会派含め、各会派から東京都十分の十負担の本事業導入について要望していましたが、区はベビーシッター事業の密室性、第三者による保育の質の確認ができないことを理由に導入を見送ってきた経緯があります。一方で、陳情の中には、区の既存の一時預かり事業について、客観的な情報と利用者としての意見がまとめられています。ファミリーサポート事業で援助会員とのマッチングが難しいこと、マッチングしても定期利用が前提なので突発的には利用ができないこと、一時預かり事業では予約開始時刻に必死で予約を取ろうとしても取れないことや、予約ができても後からの日程変更が難しいこと、はじめてのおともだち事業は利用期間が二か月で長期的には利用ができないこと、病児保育は感染症流行時二桁のキャンセル待ちになることもあり諦めるしかないこと、世田谷区に頼ろうとしても頼れない切実な状況を陳情者は訴えていました。
誰かに頼りたくても頼れない、頼る先がないというご家庭は多く、区はこれまでも子育て家庭の孤立を防ぐために様々な取組を行っていますが、対策の強化を求めたく、三点質問します。
一点目、世田谷区の既存事業では満たせない需要にベビーシッター事業は応えることができます。陳情を受け、議会は趣旨採択という判断をしました。区には今後、シッターを安心して利用するための制度設計について、しっかりとした議論を踏まえながらも、早急にベビーシッター利用支援事業を導入いただきたいと思います。陳情者、そして、陳情者に署名という形で思いを託した多くの区民に対して、本事業の導入時期を示すべきと考えますが、いかがでしょうか。明確に時期を示すことができないのであれば、せめて導入に向けての道筋をお示しください。
二点目、区民から頼りたくても頼れないという声が上がっている一時預かり事業については、改善の必要があると考えます。これまでも議会において、私含め多くの議員から様々な要望や提案が行われていますが、現在の状況と今後の展望について伺います。
三点目、昨年よりスタートしたせたがや0→1子育てエールは、0歳児のいる御家庭と行政の接点を増やす重要な取組です。令和4年度に虐待で亡くなった子どものうち四割超はゼロ歳児であり、最近も0歳児が亡くなる事件が多数報道されています。大変な状況にある御家庭の様子なども聞こえてきます。本事業の現状と実施しての効果、課題、今後の展望を伺います。
次に、障害児、障害者への日常生活支援について伺います。
障害児用の抱っこひもの購入に際して補助を行ってほしいというご要望をここ最近いただきます。障害児用の抱っこひもは、一般的な抱っこひもとは異なり、年齢が上がり、成長した子どもでも使えるような工夫があり、価格が高額です。日常の移動だけでなく災害時の避難など、必要な場面は多岐にわたります。そもそも障害児を育てる御家庭では抱っこひものほかにも様々な費用負担があり、福祉車両の購入には300万かかったというお話もありました。
障害児、障害者が日常生活を送る上で必要とする用具についての補助事業として日常生活用具給付等事業があります。これは国の法律に基づき区市町村が行う地域生活支援事業のうち、必須事業の一つとして規定され、国と都の補助を一定割合受けて世田谷区も実施しています。平成18年にできた事業で、以前は身体障害者向けの事業であったことから、自治体によって補助が出る物品に差異があるという現状を踏まえ、三点質問します。
一点目、障害児用の抱っこひもについて世田谷区で給付を行ったことがあるのか担当課へ確認したところ、過去にご要望はあれど、給付実績はないとのことでした。また、直近の相談件数も多くはないそうですが、区の事業のページを見ると、抱っこひもに給付が下りるとは思えないような品目リストが載っており、相談にも至らないのではと感じます。しかし、近隣他区では給付される事例が増えているそうで、本事業を管轄する厚生労働省も給付対象にしてよいという見解を示しています。世田谷区としても、今後、障害児用の抱っこひもを給付対象品目として認めていただきたいと思いますが、区の見解を伺います。
二点目、さきに述べたとおり、世田谷区が給付を行う品目についてはリスト化されています。ただし、事業がもともと身体障害者向けの制度であったことから、身体障害者向けの品目が目立ちます。しかし、日常生活用具給付等事業は、知的障害、発達障害を含む精神障害、障害児も対象となる事業であり、必要とする用具はおのおの異なります。新たに出てきた便利な用具も増えています。適時適切に対象品目の見直しを行っていただけないか伺います。
三点目、今述べた新たな用具として、発達障害の方が利用する環境調整用具が挙げられます。特に特殊な重みのあるブランケット、加重ブランケットは福祉用具として紹介されたり、特別支援学級や歯科治療の現場で活用されたりと、利用が増えています。厚労省としては、加重ブランケットについても日常生活用具の給付対象として認められる見解を示しています。こういった環境調整用具も相談があれば認めていただきたいです。区の考えを伺います。
最後に、学生・若者向けのアントレプレナーシップ醸成について伺います。
世田谷区では、新たな産業活性化拠点ホームワークビレッジがこの4月にオープンしました。この事業のコンセプトや計画の中に、子どもや若い世代が含まれていることに大変注目をしております。他自治体での取組を参考に、区の事業をよりよいものとしていただきたく質問いたします。
先日、私はスシテック東京に伺い、出展していた自治体と様々お話をしてきました。中でも仙台市の仙台グローバルスタートアップ・キャンパスは非常によい取組だと感じました。この事業は、仙台、東北の若者に対して、世界標準のアントレプレナーシップ教育プログラムの提供や、海外のスタートアップエコシステムの現場での実地研修を通して、起業マインドの醸成、起業意欲向上を図り、グローバルに挑戦できるスタートアップ人材へと育成するものです。仙台市としては、東北中の学生が仙台に集まってくるものの、卒業と同時に東京や大阪などほかの大都市へ巣立ってしまうというところに課題認識があり、仙台にとどまり起業してもらう、起業を成功させ仙台での雇用を生む、後に続く若者も仙台で起業といった事業の展望を描かれていました。実際に受講者が仙台市で起業したという事例も生まれたそうです。
世田谷区は区内に17の大学、学部がありますが、学生向けのスタートアップ人材の育成を目的とした施策はなかったように思います。区がこれまで行ってきた起業家支援SETA COLORのプロコースは今年からホームワークブースターとしてバージョンアップし、優先採択テーマとして学生起業を入れています。これには非常に期待をしていますが、その一歩手前、起業しようという意欲を持つ若者を増やしていく、育成していくということを主眼に置いた学生向けの取組をホームワークビレッジ中心に展開していくことはできないでしょうか、伺います。
さらにもう一点、スタートアップ人材育成、アントレプレナーシップ醸成という観点では、小中学生向けの施策も広がっています。例えば横浜市ではワークショップ形式での会社経営体験プログラムを市立小中学校、特別支援学校を対象に総合学習の時間などに取り入れています。子ども向けのマネースクール、金融教育についても、各金融機関や自治体との連携により、学校現場での実施事例が増えてきました。
世田谷区としても、ホームワークビレッジ開設を契機に、子ども向け施策展開を計画しており、隣接する池尻小とは既に様々な連携、交流を行っていると聞いていますが、ぜひ先行自治体の取組を参考に取り入れていただきたい。また、池尻小以外の区内小中学校への広がりを期待したいと思います。現在の取組状況と今後の展望について伺います。
以上で壇上からの質問を終わります。
◆子ども・若者部長の答弁
私からは、三点ご答弁いたします。
初めに、ベビーシッター利用支援事業の導入についてです。都のベビーシッター利用支援事業の導入につきましては、これまでも議会で御答弁申し上げておりますとおり、密室での保育であること、利用者宅への立入りや利用予定の事前把握が困難であること、区内に事業所を置かない認定事業者への指導監督権限がないことなどが同事業をこれまで導入してこなかった主な理由でございます。区民の皆様に安心して当事業をご利用いただくためには、これらの課題に対する実効性のある対応策を講じることが不可欠であり、検討にはスピード感を持ちながらも熟慮する必要があると認識しております。当該事業の実施時期につきましては、この場で具体的な時期はお約束できませんが、区の検討状況などを議会にもお示ししながら、課題への実行策も含めた検討を進め、安心して子育てできる環境整備に部の総力を挙げて取り組んでまいります。
次に、一時預かりの状況と今後についてです。区では、一時預かり事業として、保護者の就労等により家庭での保育が一時的に困難なときに利用できる保育園等での一時保育や、理由を問わずに子どもを短時間預かるほっとステイ、ファミリーサポートセンター事業などを実施しております。地域によっては空きが少なく予約が取りづらいとの御意見をいただいており、令和七年度から五年間の子ども・子育て支援事業計画では、保育所等における一時保育の拡充など、量の確保を図っていくこととしております。また、区民の利便性を上げる取組として、ファミリーサポートセンター事業については、利用会員登録の電子化、謝礼金のキャッシュレス対応を、また、子育てステーション内のほっとステイに関しては支払い方法の改善について今年度より取り組む準備を進めております。令和八年度からは、こども誰でも通園制度の実施を予定していることから、既存の一時預かり事業と併せて、在宅子育て支援の充実に資するよう制度の枠組みを検討してまいります。
次に、せたがや0→1子育てエールの現状、効果、課題、今後についてです。区では5か月から11か月の子どもを育てる家庭に毎月訪問し、子どもと保護者の様子を見守り、子育て支援情報等の提供を行うせたがや0→1子育てエールを令和六年七月より開始いたしました。地域子育て支援コーディネーターをはじめとしたネウボラチーム等と連携し、訪問後に必要なフォローを行うことで、特に孤立しやすいとされるゼロ歳児を育てる家庭への伴走型支援の強化を図っております。本事業は現在、約7割の子育て家庭にご利用いただいております。終了後のアンケートでは、事業を利用してとてもよかった、よかったとの回答が約9割に上り、毎月気にかけてくれる存在がいる安心感があったなどの御意見を多くいただいております。一方で、事業を御利用いただいていない家庭へのアプローチや、提供する子育て支援情報のさらなる充実等の課題もございます。アンケート結果などからニーズを分析し、引き続き事業の改善を図りながら、全ての子育て家庭が孤立せず、人や地域につながりながら安心して子育てができる地域社会の構築に向け、しっかりと取り組んでまいります。以上です。
◆障害福祉部長の答弁
私からは、障害者児への日常生活支援について三点ご答弁いたします。
まず、障害児用の抱っこひもについてです。障害者日常生活用具給付事業は、障害者総合支援法の規定による障害者児の日常生活を補助する用具を給付する事業で、区市町村が主体となり取り組む事業です。具体的には、厚生労働省から示された用具の要件や用途及び形状を基に、介護・訓練支援用具や自立生活支援用具など、区市町村が品目や基準額を定めることができる仕組みとなっています。給付品目については、毎年、総合支所や障害者支援に携わる関係機関の職員等をメンバーとする検討会において、区に寄せられた利用ニーズや新規開発製品の情報を共有し、より多くの方に御利用いただけるよう必要性の高い用具を選定しているところです。ご指摘いただいた抱っこひもは、介護者が障害児等の身体介護を支援するために必要性の高い用具の一つと認識しています。今後、ニーズの把握に努め、他自治体の状況等も参考に、ほかのニーズの高い用具と併せて給付品目とすることについて検討してまいります。
次に、日常生活用具給付の対象品目の拡充についてです。日常生活用具給付事業は、過去、身体障害者を対象とした事業であったため、障害者総合支援法の施行により障害の対象が拡充した後も、身体障害以外の品目がなかなか増えていない現状があります。現在、給付対象59品目のうち55品目が身体障害や難病患者を対象とした用具となっており、知的、精神、発達障害者への給付対象品目はまだ少ない状況です。知的、精神及び発達障害者は、コミュニケーション支援や時間の認識支援、文章の読み取り支援など、身体障害とは異なった支援が必要なため、今後、既存の給付品目の見直しや新たな給付品目の選定を進め、品目の増加に伴う財源確保等の課題を整理しつつ、取組を進めてまいります。
次に、発達障害の方が利用する環境調整用具についてです。発達障害の方はコミュニケーションを取ることが苦手だったり、予定外のことがあるとパニックを起こすなど、障害特性に応じた様々な支援が必要であり、日常生活を安定して送るための環境を整える用具の活用は有効と考えています。ご指摘の加重ブランケットは、感覚過敏のある自閉症や発達障害の方に感覚統合や落ち着きをサポートできる側面のある用具と認識しています。区としては、発達障害の方の支援を行う施設や支援者にヒアリングを行うなど、発達障害の特性や必要な支援を勘案し、より有効な用具のニーズ把握に努めながら、選定に向けた検討、調整をしてまいります。以上です。
◆経済産業部長の答弁
私からは、学生、若者のアントレプレナーシップ醸成について二点ご答弁申し上げます。
一点目、ホームワークビレッジにおけるスタートアップ人材の育成を主眼に置いた学生向けの取組についてでございます。ホームワークビレッジでは、スタートアップ支援として、コ・ワーキング・スペース等での起業の基礎知識に関するセミナーや、起業や事業者の成長を後押しするアクセラレータープログラム等を実施してまいります。また、シェアキッチンや広場でのマルシェなど、創業前の方も含めた出店希望者がチャレンジできる場の提供も行ってまいります。施設開設前に実施したシンポジウムには区内大学生の参加もあり、また、四月の開設当初には学生が自主的に施設を見学するなど、この施設への学生の関心は高いものと認識しております。区としましては、区内大学にホームワークビレッジの設置目的や機能等を積極的に周知し、広く学生に知っていただくとともに、例えば大学への出前講座や学生向けプログラムの実施など、区内大学の意向も踏まえながらスタートアップ人材の育成につながる連携について検討してまいります。
二点目、小中学生向けのアントレプレナーシップ醸成の取組についてでございます。ホームワークビレッジでは、産業と連携した学びの支援として、想像力によって様々な学び方や表現が生まれる知育玩具を設置した常設の学びの場の提供や、主に小学生を対象とした食、虫、服、街をテーマとした探究型スクール事業を実施しており、多くの子どもたちが既に学びを進めているところでございます。また、隣接する池尻小学校とは施設開設前から顔の見える関係を築いており、五月には、地域をテーマとした総合学習の一環として三年生がホームワークビレッジを見学しました。今後、ホームワークビレッジを活用した連携の取組として、子どもたちの発想や発案に応じた学習に発展させていく予定でございます。区としましては、ホームワークビレッジが未来を担う子どもたちの新たな学びや気づきを促進する場となるよう、教育委員会とも連携し、池尻小学校との学習の取組を積極的に進めるとともに、他の小中学校も含め、子どもたちへのより多様な学びの機会の提供に努めてまいります。以上でございます。
◆答弁を受けてのコメント
ベビーシッターの件ですが、陳情の趣旨採択を受けて、涙が出るほどうれしい、他区から引っ越して保育園に入れずシッター補助もなくて失敗したと思っていたという声もありました。復職を控える方や第二子妊娠中の方も、先の生活に不安を感じる中で、少しでも希望を持っていただけているような感じがします。全ての子育て家庭が孤立せず、安心して子育てができるよう、様々な施策も併せて引き続き取り組んでいただくよう求め、私の質問を終わります。
以上。